物性化学 まとめ


第12回(2010/7/6)

水素結合

主に、分子の分極による静電気力から成る結合。
電荷移動相互作用(X-H結合の反結合性軌道と孤立電子対とで新たに軌道ができることによる安定化)と
交換斥力(X-H結合の結合性軌道と孤立電子対とで新たに軌道ができ、その軌道の反結合性軌道に
電子が入ることによる不安定化)はちょうど打ち消しあう。
水素結合では、結合距離や角度が割としっかり固定されている。

疎水性分子・両親媒性分子

分子の種類分けは、高校までと同じ。
これらの分子を水に溶かしたとき、その分子を取り囲むクラスター水分子
(水素結合でつながった複数の水分子)が、なるべく少なくなる方が安定である。

タンパク質(ポリペプチド)

ペプチド結合では、N原子の孤立電子対とC=O二重結合とで共鳴構造が成立し、平面性を持つ。
タンパク質の2次以上の高次構造は、ペプチド鎖の間の水素結合によって決まる。
タンパク質の熱変性では、この水素結合が切れることで、全体の構造が変わり、性質が変わる。

ホフマイスターシリーズ(余談)

水に溶かしたときに、周りにクラスター水分子を多く引きつけるイオンの順列。



第11回(2010/6/29)

電気双極子モーメントと極性

高校で習った通り。
双極子モーメントの値を覚える必要はないが、0(無極性)かどうかは把握しておくこと。

ファン・デル・ワールス力

極性の有無に関わらず、全ての分子間に働く微小な力で、距離の6乗に反比例する。
ファン・デル・ワールス力は、分子間のクーロン力によるもので、
無極性分子では、外乱によって分極した分子が、その分極による電場で
連鎖的に他の分子を分極させていくことによって発生する。

レナード・ジョーンのポテンシャル(発展的内容)

ファンデルワールス相互作用の大きさを表す経験則。
指数の12については、厳密に導出されたものではない。

ファンデルワールスの気体の状態方程式

理想気体の状態方程式 pV=nRT を実在気体で使えるように補正したもの。

ファンデルワールス半径

ファンデルワールス力によって(極低温で)できた単体の結晶について、
単純に原子間距離を2で割ることで求められる原子のサイズ。



第10回(2010/6/22)

イオン結晶の種類(六方晶)

ヒ化ニッケル型 … ベースは六方最密構造・6配位
ウルツ鉱(ZnS)型 … ベースは六方最密構造・4配位

イオン結晶の種類(立方晶)

ホタル石型 … ベースは面心立方格子構造・8配位と4配位の共存
ルチル型 … 独特な構造(プリント参照)・6配位と3配位の共存

イオン結晶の種類(発展的内容)

ペロブスカイト構造 … 面心立方格子を3種の元素で構成
スピネル型 … 独特な構造(プリント参照)
コランダム構造 … ほぼ六方最密構造だが、所々抜けている

ポーリングの静電気原子価則

簡潔に言うと、プラス・マイナスの偏りがある構造はダメ、ということ。
結晶構造の模式図に描いてある、最近接の原子どうしを結ぶ線を、
(1/4)重結合や(1/6)重結合に見立てると、共有結合性結晶のように考えることができる。

超電導物質(発展的内容)

極低温にしたときに、電気抵抗が0になる物質のこと。
最も早くに発見されたのは水銀で、4.2K付近で超電導になる。



第9回(2010/6/15)

イオン結晶の種類(立方晶)

塩化セシウム型 … 体心立方構造・8配位・原子密度:大
塩化ナトリウム型 … 単純立方構造・6配位・原子密:度中
セン亜鉛鉱(ZnS)型 … ほぼダイヤモンド構造・4配位・原子密度:小
イオン半径比(r+/r-)によって、どの構造になりやすいかが決まる。

ボルン-ハーバーサイクル

高校でもおなじみの、化学反応のエネルギーを細かく分解して考える方法。
1つの化学反応に2通りの経路が考えられる時、いずれの経路もエネルギーの合計は等しい。

格子エネルギーの求め方

イオン間のクーロン力による位置エネルギーを考える。
近接したイオンから順に計算すると、エネルギーは無限級数の形になり、
各項の共通部分を括り出した残りの部分(6−12/√2+8/√3−…)をマーデルング定数という。
配位数が多いほどマーデルング定数が大きく、結晶はより安定ということになる。

極限半径比

陽イオン同士が接触している状態で、陰イオンの大きさを変化させたとき、
陽イオンと陰イオンがちょうど接触するイオン半径比(r+/r-)のこと
8配位:0.732 6配位:0.414 4配位:0.225 であるが、計算により容易に求められる。

念のために、4配位の場合の解法を載せておく。
1辺がaの正四面体を考える。4頂点に陽イオンが、中心点に陰イオンが存在する。
頂点と頂点を結ぶ直線の長さは (陽イオンの半径)x2 であり、具体的には a となる。
頂点と中心点を結ぶ直線の長さは (陽イオンの半径)+(陰イオンの半径) であり、具体的には (√6/4)a となる。
以上より、(陽イオンの半径) = a/2 、(陰イオンの半径) = (√6/4-1/2)a であり、その比は0.225となる。




第8回(2010/6/8)

7の晶系と14のブラヴェ格子

高校までと同じ単位格子の概念を、少し数学的に表現すると r=n1a+n2b+n3c となる。
晶系ブラヴェ格子は、結晶構造を幾何学的な分類である。

バンドと金属・半導体・絶縁体

バンド … エネルギーを縦軸としたグラフ上の、電子軌道の存在範囲
金属 … バンド内に空きの軌道があり、バンドの中で容易に電子を励起することができる。
半導体 … バンド内に空きの軌道がないが、1つ上の軌道までのエネルギー差が小さいので、励起することが可能。
不純物半導体では、不純物由来の軌道が間に存在するので「足掛かり」にして励起しやすい。
絶縁体 … バンド内に空きの軌道がなく、1つ上の軌道までのエネルギー差が大きいので、励起することができない。


結晶方位・結晶面の表記法

結晶方位は、ベクトルr=ha+kb+lcの係数を用いて[h k l]の形式で記述する。
結晶面は、x切片が1/h, y切片が1/k, z切片が1/l の平面として考え、
その方程式 hx+ky+lz=1 の係数を用いて(h k l)の形式で記述する。
h(k,l)が0の時はx(y,z)切片は無限大、つまりx(y,z)軸に平行である



第7回(2010/6/1)

配位子場分裂

原子のd軌道の電子が、配位子の持つ電子による影響を受けて、エネルギー準位が変化する。

要は、配位子の位置とd軌道の電子の位置が重なると、反発してエネルギーが上昇し(不安定になり)、
位置がうまくズレて収まると、エネルギーが低下する(安定になる)ということ。

同一の中心原子であっても、配位子の種類によって、エネルギー準位の変化が異なる。
この変化の小さい順に配位子を並べたものを分光化学系列という。

高スピン錯体低スピン錯体

配位子場分裂で分裂したd軌道に、どのような順序で電子が入るかによって、スピンが変化し、その物質の磁性に影響する。
分裂 大 → 低スピン
分裂 小 → 高スピン


配位子場遷移(d-d遷移)電荷移動遷移

配位子場遷移(d-d遷移)分裂したd軌道の間で電子が移動する
電荷移動遷移分裂したd軌道と配位子の軌道との間で電子が移動する



第6回(2010/5/25)

配位結合・キレート・金属錯体

キレート … 配位結合で生成する分子のうち、配位子が複数の部分で配位するもの

配位結合では、孤立電子対の供与が起こるので、ルイス酸・ルイス塩基の考え方を適用できる。

硬い酸・塩基 … 原子半径が小さく、極性が小さいもの
軟らかい酸・塩基 … 原子半径が大きく、極性が大きいもの
→似た性質を持つもの同士で反応しやすい

d軌道と混成軌道

5つのd軌道の形状・向きは覚えておくこと。

混成軌道により分子の概形が分かる。(関連:VSEPRモデル)
逆に、分子の形状から混成軌道を考えると、磁性の有無が分かる



第5回(2010/5/18)

ヒュッケル分子軌道法(続き)とヒュッケル則

共役直鎖ポリエン → 円を描いて半円周を(n+1)等分することで、各分子軌道のエネルギーを求められる。
平面環状共役ポリエン → 円を描いて円周をn等分することで、各分子軌道のエネルギーを求められる。

ヒュッケル則」… 平面環状共役ポリエンのπ電子数が(4n+2)となる時に芳香性を持つ
→全ての電子がエネルギーの低い軌道(円の下半分)に収まり、非常に安定だから。

HOMO・LUMOとスペクトル・光異性化

HOMO・LUMOの間を電子が遷移することでスペクトルが生じる(復習)
HOMO軌道とLUMO軌道では、距離に対するエネルギーの変化の仕方が異なるので、
電子を遷移させて、安定な原子間距離を変えることで、物質の構造を変えることができる。
これを光異性化という。


付加環化反応

共役ポリエンがくっついて環化する条件 … お互いのHOMO・LUMOの電子雲の位相(+/−)が一致
自己環化では、位相を合わせるために構造がねじれ、立体異性体が生じることがある。



第4回(2010/5/11)

ヒュッケル分子軌道法と結合次数

構造化学では、水素分子の分子軌道を考える際に、
重なり積分S、クーロン積分α、共鳴積分β
を用いた複雑な式でエネルギーEや波動方程式Ψを表したが、
ヒュッケル分子軌道法では、以下の近似を用いて簡略化する。

(i) クーロン積分αは全て等しい。
(ii) 重なり積分Sは微小なので無視する。
(iii) 共鳴積分βは全て等しい。
ただし直接結合していないものは0。


ε=∫ΨHΨdτ より立式し、変分法・非自明解の存在条件を用いると、
各分子軌道を、原子軌道の線形和で表した時の係数C1,C2,...と
分子軌道のエネルギーεが求められる。
1,C2,...から、π電子の存在確率や、π結合次数が分かる。



第3回(2010/4/27)

分子軌道とウォルシュダイヤグラム

前回に触れたように、分子軌道を考えるには、分子の対称性が重要となる。
点群を元にして、Mullikenの記号という体系的な分子対称性の判定法を導入する。
分子軌道は、Mullikenの記号が同じ2つ以上の原子軌道から生成する。

ウォルシュダイヤグラムとは、水やアンモニアといった(広義の)折れ線型分子について、
折れ線の角度を変化させたときに、各分子軌道のエネルギーがどのように変化するかを示したもの。
エネルギーが上がるか下がるか、は定性的に判断できるようになるべし。



第2回(2010/4/20)

エネルギーと反応性の話

孤立電子対を用いて、異性化反応の起こりやすさや、物質の形状を説明できる

点群の話

分子軌道を考えるためには、分子の対称性を知る必要がある。
分子の対称性を体系的に調べ、表記する方法が点群である。
点群はあくまで「手段」であることに注意。

水…C2v、ベンゼン…D6h、くらいは覚えておくこと。



第1回(2010/4/13)

ほとんど高校化学の復習。

孤立電子対(Lone Pair)」… いわゆる「非共有電子対」のこと。
形式電荷(FC)」… 多原子イオンでおなじみの考え方。
(ex)アンモニウムイオンNH4+は全体で+1
VSEPR(原子価殻電子対反発)モデル」… 孤立電子対と共有電子対の数から、分子形状を定性的に予想

分子の立体構造を考えるには…
@原子価結合法でおおまかに考える
A混成軌道で少し詳しく考える
B分子軌道で精密に考える(次回)



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