構造化学 解説


パウリの定理について

[主張]
「2個の同じフェルミ粒子のラベル(電子aとか電子bとかのabのこと)を交換するとき、全波動関数は符号を変える」

[主張から結論を導く]
@電子a、電子bのスピンの向きの組み合わせは22=4通り(単なる場合の数の計算)
Aその4通りについて波動関数を書くと、  ※α・βを表すバーはhtmlでは書けないので省略しています
  (ア) 2電子が異なるスピン()(表記法その1) (|ΦaΦb|−|ΦaΦb|)/√2
  (イ) 2電子が異なるスピン()(表記法その2) (|ΦaΦb|+|ΦaΦb|)/√2
  (ウ) 2電子ともαスピンを持つ() aΦb|
  (エ) 2電子ともβスピンを持つ() aΦb|
Bこの4式の中で、ラベルaとかbとか)を交換して、全体の符号が入れ替わるのは、(ア)のみ。
Cよって、1つの副殻の中では、2電子が異なるスピンの向き(αとβ)を持たなくてはならない。

[結論]
「フェルミ粒子が同じ状態を占めることができない」(より一般的な表記)

※表記法その1・その2では、数式上の違いはありますが、表しているもの()は同じです。



全角運動量について

全角運動量とは、軌道角運動量Lとスピン角運動量Sを合わせたものです。
3Dを例に説明します。 

左肩に表記された数字 3 は、2S+1という数値です。(つまり、この場合S=1となります。Sについては下記を参照)
この時、その軌道は(2S+1)重に縮退していると言います。(同じエネルギーの軌道が(2S+1)個あるということです)
また、その状態を(2S+1)重項状態と言います。

D という文字は、Lの数値を以下の法則に従って、アルファベット表記したものです。(つまり、この場合L=2となります。Lについては下記を参照)
0→S 1→P 2→D 3→F 4→G 5→H 6→I(軌道の命名でおなじみのやつです。)

L … 電子が1つだけ入っているオービタル(2pzとか3dxyとか)を量子数(主量子数n,方位量子数l,磁気量子数m)で表記した際の、lを足しあわせたもの。
S … その原子に属する全ての電子のスピン角運動量(↑ならs=1/2 ↓ならs=-1/2)を足しあわせたもの。



He原子のエネルギー計算について



He原子のエネルギーを計算するときには、上の図のように、考慮に入れる項目を増やしていくことで、順に計算の精度を上げていくのですが、
なぜ「クーロン反発」と「有効核電荷」を別々に考える必要があるのでしょうか?

というのも、そもそも有効核電荷というのは、電子と原子核の間に働く力を電子同士のクーロン反発で補正するものですから、
両方を別々に考慮すると補正が2重になってしまうように思えます。

しかし、以下のように考えれば、この「2重の」補正が正しいものであることが分かると思います。

エネルギーを求めるには、シュレディンガー方程式を解かなくてはなりません。

エネルギーを精度よく求めるには、当然、ハミルトニアン波動関数の精度を上げる必要があります。

実は、上の図において、クーロン反発を考慮して計算し直したのはハミルトニアン
有効核電荷を考慮して計算し直したのは、波動関数となっています。
つまり、1つの補正を2つの項目に対して施していただけなのです。

ではなぜ、同じことを考えるのに、波動関数ハミルトニアンとで異なる考え方をしたのでしょうか?

ハミルトニアンは、原子の中の各粒子についてエネルギーを全て書き上げるだけで良いので、
電磁気学的に3体問題として、クーロン反発を考えるのがシンプルです。
一方、波動関数では、3体問題に分解して考えることはできそうもないので、
有効核電荷として処理する方がシンプルに書けるのです。

まとめ
補正のしかた適用先
クーロン反発ハミルトニアン
有効核電荷波動関数




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